WACE第19回世界大会 開催報告

グローバル社会を生き抜く力の育成をめざした産学連携教育の確立に向かって

WACE第19回世界大会は、2015年8月19日~21日、京都産業大学において、「グローバル社会を生き抜く力の育成をめざした産学連携教育の確立に向かって」という大会テーマのもと開催された。ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカなど世界24カ国から海外参加者227名、日本からは大学や高校などの教育機関、企業、行政など多方面から408名が参加し(3日間の延べ参加人数は1,342人)、次世代の産学連携教育を見据えた活発な議論、意見交換が行われた。

大会初日は、WACE CEOのポール・ストンリー博士の開会宣言に続いて、京都産業大学学長の大城光正氏、京都府知事の山田啓二氏、京都市長の門川大作氏による歓迎と大会への期待等が述べられた。

3日間にわたり、プレナリーセッション、分科会などにおいて、基調講演、テーマ別討議、グループ別討議、査読論文/一般論文発表、ポスターセッションなど100以上のプログラムが実施された。また、5つの国内事例をテーマとした特別セッション「ジャパンプログラム」も実施され、日本で初めて開催されたWACE世界大会は、日本の大学や企業など産学連携教育関係者が、国内外の事例やトレンドに触れ、ネットワークを広げる機会となった。今後、日本ならではの産学連携教育の発展につながることが期待される。

「特別交流セッション—日本の大学とWACE会員大学との国際大学間連携推進」には、日本の大学と海外大学40校が参加し、和やかな中にも、熱気に包まれた会場で、大学自己紹介から、個別の話し合いに発展した。学生交換や国際インターンシップなどのパートナーを見つける機会となり、具体的な交流に発展する成果も出てきた。

過去の大会と比べて本大会では、アジア各国におけるCWIEの現状と課題を討議するアジアセッション、グローバル人材育成のための国際CWIEプログラム(国際インターンシップ)、CWIEの国際連携に関わる発表やセッションなど、大会テーマを反映して、産学連携教育におけるグローバル化、多様化の傾向が強く現れた。

WACE第19回世界大会は、大会招致から実施まで3年間の準備期間をへて実施された。ご参加いただいた日本の産学連携教育関係者の皆様、開催校として大学をあげてのご協力を頂いた京都産業大学の皆様に心より御礼を申し上げたい。

WACE日本事務所

プレナリーセッションの内容は以下よりご覧いただけます。

  • プレナリーセッションII 基調講演

    企業が求める人材と大学教育への期待

    講演者
    • 山本 忠人氏(富士ゼロックス株式会社 代表取締役会長)
    • プレナリーセッションII 基調講演
    • プレナリーセッションII 基調講演

    同社の事業モデルがプロダクト販売からソリューションビジネスへと移行している中で、求める人材の能力が変化している。熱意・意欲、マナー、誠実さ、社会への関心など仕事をする上での基本的な姿勢とともに、コミュニケーション力、チームワーク力など業務実践に必要なヒューマンスキルが求められており、新入社員のハイパフォーマーとローパフォーマーを比較すると、「マナー・熱意」「問題解決力」「コミュニケーション力」で差が大きい。

    大学に期待することは、専門知識だけでなく、顧客との対話を通じて課題を発見する能力、課題解決力、新しい価値を創造する力、海外の人と協働する能力、強いリーダーシップの育成である。

    同社が実施している産学連携活動には、イノベーション創出のための大学との共同研究、若手人材育成のためには①「VFP(Visiting Fellowship Program)」②「実務実践型インターンシップ」③「就業体験型インターンシップ」④「PBLインターンシップ」がある。「VFP」は中国、シンガポール、インドから年間10名程度の学生を1年間、給料・保険・渡航費等を会社負担で呼ぶプログラム。
    同社のデータによれば、インターンシップの学生のメリットは「自分に必要な能力・スキルに対する理解・気づきがあった」、企業側メリットは「インターン生の3/4が入社を希望」「入社した社員の離職率が1.8%と低い」「インターン経験者は入社後の行動評価が高い、特にVFP経験者は高い」とし、インターンシップや産学連携教育の成果と期待が述べられた。

  • プレナリーセッションIII パネルディスカッション

    CWIEの次のステップに向かって、グローバル課題と機会

    パネリスト
    • サンパン・シラパナド氏(タイ ウェスタンデジタル社副社長、WACE企業側会長)
    • ゾリカ・パンテイック博士(米国ウエントワース工科大学学長)
    • マウリッツ・フォン・ルイーツエン博士(ロンドンスクールオブビジネスアンドファイナンスCEO兼総長、WACE大学側会長)
    • 宮川敬子(NPO法人WIL代表、WACE日本事務所代表、WACE常任理事)
    モデレーター
    • ジュディ・ケイ氏(オーストラリア産学連携教育協会会長)
    • プレナリーセッションIII パネルディスカッション
    • プレナリーセッションIII パネルディスカッション

    2020年までに達成したいCWIEの課題はなにか? どのように、CWIEプログラムにキャリア開発を組み込んでいくか?などの命題をパネラーが討議。

    企業側パネラーからは、求める人材のスキルセットが変わってくる。企業は適した人材を採用することが不可欠で失敗は許されない。このためにCWIEの必要性は益々高まるようになる。米国の大学側パネラーからは、CWIE実施大学を増やし、国際CWIEプログラムを増やす必要性、ならびに、特定の専門分野の習得だけではなく、学際的、異分野においても、チームで協働して成果を出せるような人材の育成が、企業から求められているため、学際的なプロジェクト・ベースのCWIEプログラムを継続的に増やしてゆく必要性が強調された。日本のパネラーからは、個別大学のポジション、教育目標あった多様なCWIEプログラムを増やし、参加学生を増やす。長期プログラムを定着させる。国際CWIEを開発し充実させることの必要性が提起された。

  • プレナリーセッションIV 基調講演

    タイにおけるCWIEの実践:国際CWIEの課題に直面して

    講演者
    • ウィチット・スーサーアン博士(タイ産学連携教育協会会長、スラナリー工科大学創設者、WACE常任理事)
    • プレナリーセッションIV 基調講演
    • プレナリーセッションIV 基調講演

    1993年にタイにおけるCWIE導入から現在(117大学、15,000企業、37,000人の学生が参加)までの発展の過程。
    タイ産学連携教育協会(TACE)の設立と政府支援。CWIEのプレースメントのための大学/企業向け研修の実施。CWIEスタンダードの確立。
    タイにおける国際プログラムの導入と発展については、ウェスタンデイジタル社の積極的参加と国際CWIEスタンダードづくりの貢献が大きい。同社は過去2年間に海外から100人の学生を受け入れており、企業による国際インターンシップ受入のモデルとなっている。

    今後の課題:イノベイテイブな学生を育成するCWIEプログラムとするには、単に職場で働くだけでなく、プロジェクトベースのトレーニングも必要。CWIEへの教員のインボルブをもっと増やすことも必要で、企業にとってもメリットとなる。プログラム運営のための優れた人材と研究者の育成が必要である。そのために、コーオプ教育のphDコースを開設した。

  • プレナリーセッションV

    オープン・スペース・テクノロジー

    • プレナリーセッションV
    • プレナリーセッションV
    • プレナリーセッションV

    1980年代にハリソン・オーウェンによって考案されたOST「オープン・スペース・テクノロジー」手法を用いて、3日間の大会最後のプログラムとして、全員参加でワークショップが実施された。

    大会中に頭の隅に引っかかっている問題を参加者が自由に提示し、テーマ毎にグループでデイスカッションと解決策の提案を行い、次回会議のテーマへと繋げるセッション。
    「CWIEの世界のUvaとは何か?(CWIEにおいて従来のモデルを脅かす、もしくは覆すような新しい動きは何か?)」というテーマには、参加者が殺到していた。

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